◇弁護士 河原 誠の解決事件簿コラム

2012年11月20日 火曜日

精神病、別居と離婚裁判

 最近は、鬱病の患者さんも増えているようですが、精神病に罹患した(らしい)奥さんと約10年の別居を経て、子どもが成人したことをきっかけに離婚したいという案件がありました。
 奥さんは、結婚一年後くらいに精神病ではないかという行動に出始めたのですが、精神科に行かないまま、結婚後15年ほどすると、奥さんがぷいと実家に帰ってしまいました。。年に数回、気の向いたときに帰ってくるだけでは、2人の子どもの世話もできません。子どもの面倒をみに依頼者の母が家に来ていましたが、義母に会うと部屋に閉じこもってしまう、暴言を吐くなど、手に負えない状況にありました。

 結論から申しますと、相手が調停にも裁判にも出頭しなかったこと、医師も守秘義務を理由に調査嘱託に回答しなかったことから、当方の言い分のみを裁判所で主張して、5号離婚の判決を頂きました。

■調 停
 離婚事件はまず調停から入らないといけません。調停の際に病気が悪化する危険も考えて、裁判所は精神科医も同席して貰えるよう計らって、呼び出しをかけたのですが、裁判所には現れませんでした。そのような空回りの調停を3回程重ねて、調停不成立。この時点で、別居から9年以上経過しています。

■裁 判
 次に訴訟を提起します。離婚事由として、「回復の見込みのない」「強度の精神病」(民法770条1項4号、「婚姻を継続しがたい重大な事由」(同項5号)の二点を掲げました。
 ただ「回復の見込みのない精神病に」かかっている場合、事理弁識能力(離婚を求める裁判にかかっていることとその意味を理解し、相手の主張に反論できる能力)があるのか?という問題が待ち構えています。
 相手方の健康保険の利用状況から、実家近くの精神科にかかっていることは把握していたのですが、ドクターは、個人情報だから教えられない(当たり前ですが)、「本人に裁判所に行かなければならないことは伝えてみるが・・。」と言葉を濁します。
 しかし、結局、裁判の期日に法廷には現れません。
 そのため、裁判所に調査嘱託を申し立てました。
・嘱託事項
(1)被告が嘱託先で受診した事実の有無、受診している場合、被告の病名
(2)被告の初診年月日、初診時に診断した病名
(3)被告が、現在、嘱託先で受診しているか否か、受診している場合、現在の被告の病名、初診時からの被告の病状・病名の変化
(4)現在、受診していない場合、最終診察年月日、最終診察の際の被告の病状・病名、照会先病院クリニック等の名称・連絡先
(5)被告が精神病に罹患している場合、現時点の判断として、その精神病の回復の見込み
(6)現時点の判断として、被告に事理弁識能力があるか

 この裁判所からの照会にも、ドクターは、守秘義務を盾に回答してくれません。
 再度架電して、ドクターには、せめて裁判に出てきて欲しいと伝えて頂けるようお願いしました。結局、それでも相手方は裁判に出て来ず、裁判所もやむなく原告(依頼者)だけの本人質問をして結審し、長期間の別居で夫婦としての実態はないことを認定して、離婚を認めました(770条1項5号)。


 裁判所も相手方の態度に困っていましたが、裁判では、当事者が主張しない限り、その事実はないものとして扱われます。本件の場合、被告が訴訟能力がないことを主張しないと、その点の判断は下されません。結果は、依頼どおりのものを得られたのですが、後味の悪い事件でした(平成23年判決の案件)。


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2012年11月11日 日曜日

破産者自らの売掛金回収

【破産>申立>売掛金】
 依頼者は現在の仕事を始める前に、友人とともに会社を経営していました。ところが、その友人は拡大傾向が強く経営方針で対立し、依頼者は会社から退職しました。その後、自ら別事業を興して軌道に乗りかけたところ、以前の会社が破産し、以前会社が借入をする際に"保証人として署名した借入金"の請求が来てしまいました。

 依頼者としましては、

破産はやむないが、どうしても、現在の事業の取引先にはその事実を知られたくない。

しかし、破産すると、破産決定後に支払時期の到来する売掛債権は破産管財人が回収することになり、現在の取引先に破産の事実を知られてしまう。このジレンマの中、現在の売掛先を裁判所に伏せたまま破産申し立てできないかとの依頼でした。

 自分の手を離れた会社の借金でなぜ今の事業の信用を落とさなければならないのか納得できないお気持ちはよく分かります。ただ、退職時に保証人を抜けておく必要がありました(簡単ではありませんが)。

 依頼者の意向をそのまま汲んでしまうと詐欺破産罪という犯罪になってしまいます。 それは、絶対に避けなければなりません。

 そこで、依頼者に納得して貰った上で、破産申立の際には全てきちんと財産目録に記載した上で申立をしました。その際、上記事情を説明し法的に問題のない方法を破産管財人に提示して破産管財人を説得し、破産管財人が裁判所の許可得て、申立人(=破産者)自らが現在の取引先の売掛金を回収することで、現在の取引先には、破産決定・免責決定を経たことを知られないまま、現在の事業を継続することができました。

 管財人、裁判官のどちらかを説得できなければ、このミッションは失敗に終わっていましたが、無事説得に成功しホッとしたことを覚えています。

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2012年11月 9日 金曜日

浪費と免責(2)

 本来、破産決定を得て、免責決定を得る(厳密には別の手続です)ためには、免責不許可事由にあたらないことが必要です。免責不許可事由の中には、「浪費、賭け事」(破産法252条1項4号)が規定してあります。但し、不許可事由があっても「裁判官が事情を考慮」して免責を認めることができるという例外が規定されています。
 その例外としての免責(裁量免責/破産法252条2項)を得ることが出来た一例です。

 ギャンブルなどで、約650万円の借金を抱えた依頼者の免責

 依頼者は、勤める会社の業績の悪化で給料が遅れたり分割になったりしました。その影響で返済に間に合わない支払いなどを借金する事になりました。後で入ってきた給料を交際費やパチンコ等に使ってしまいました。
 彼は、給料の遅配などで生活費を補うための借金生活の中で、少しでも競馬で当てて生活を楽にしたいという気持ちでギャンブルを続けていました。競馬の電話投票会員に当選したため、友人らの馬券も頼まれるようになり、通帳上はかなりの金額をJRAに支払っていました(通帳に記載され確実に裁判官が確認されるだけに、裁判官に与えるインパクトは強いです)。
 そのような中、宝くじに当たり一気に150万円位を返済をするという成功体験をしたこともありました。また、親族等からの援助でほぼ完済でき、結婚もして一時はギャンブルをやめていた時期もありました。

 その後、彼は、離婚等の精神的負担に加えC型肝炎であることが判明したりして、何をしていても悲しみと死の不安が頭から離れずパチンコで現実逃避をしてしまいました。

 そのため、また借金が増えはじめ、入院・治療費で借金が増加し、退院後は仕事復帰しても今までの様には働けず収入が減りました。そのため、借金の返済を焦り、一度の成功体験にすがってギャンブルで何とかしようと思い、更に借金を増やしてしまいました。

 私が受任した際には、その債務額は利息制限法に引き直しても650万円強にもなっていました。簡単に免責決定が貰える案件ではありません。しかし、裁判所に、ギャンブルの事情の上申書、依頼者の反省文を提出するなどして、裁判官を説得して、何とか免責決定を得ることが出来ました。(平成21年の案件)

破産法252条1項4号「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」

破産法252条2項「裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」

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2012年11月 7日 水曜日

浪費と免責(1)

 本来、破産決定を得て、免責決定を得る(厳密には別の手続です)ためには、免責不許可事由にあたらないことが必要です。免責不許可事由の中には、「浪費、賭け事」(破産法252条1項4号)が規定してあります。但し、不許可事由があっても「裁判官が事情を考慮」して免責を認めることができるという例外が規定されています。
 その例外としての免責(裁量免責/破産法252条2項)を得ることが出来た一例です。

ギャンブルなどで、約250万円の借金を抱えた依頼者の免責

 依頼者は、まだ10代の独身のころ、不都合な現実から逃避するために、ゲームセンターやパチンコに身銭を費やすようになり、20歳を超えてからは借金をしては、旅行費用や飲食費、交際費などにも借入金をつぎ込み、結局、親に頼って完済してもらっていました。結婚の際、170万円を貯めると約束しながら40万円しか貯められず、残りをサラ金から借り入れて結婚時の資金としました。
 結婚して新しい生活が始まり、自分の自由がなくなったこと、仕事上のトラブルや、妻に秘密の借金、妻の嫌な面も見えたりしてストレスが高じ、再び、パチンコに逃避し、サラ金からの借入を徐々に増加し、相談を受けた段階では、債務総額は250万円を超えていました。

 そのような案件でも、依頼者がパチンコ依存症ではないかとまで疑い診察を受けていたこと、抗うつ剤を処方されていたこと、パチンコは申立の数か月前にはやめていたこと、依頼者の反省、家族の生活の必要などをアピールして、無事、免責を得ることが出来ました(平成23年の案件)。

                                                 
破産法252条1項4号「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」

破産法252条2項「裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」

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2012年11月 6日 火曜日

破産してもそこそこの財産は手元に残せることをご存じですか?

【破産>申立>財産】
 破産すると「全財産」を取り上げられて、4畳半一間の文化住宅に住むしかないと考えて  おられる方もいらっしゃるようですが、 そんなことはありません。
 
  一定の種類の「財産(普通の生活に必要な財産)」は最低限確保することができます。  例えば、エアコン、冷蔵庫、テレビ、服にはじまり、一定の年数が経っていれば自動車も  大丈夫です。
 さらに、一定程度財産がある方は、管財事件として申し立てれば(管財人の費用を別途裁判所に納めなければなりません)、のうち、99万円までは、確保できることになっています(平成17年の改正により新設)。

 賃貸物件にお住まいなら、賃料にもよりますが、そのまま居住を続けることが出来る場合がほとんどです。
 持ち家の場合は明け渡す必要が出てきますが、それでも、すぐに出て行かなければ、強制的に荷物を放り出されるわけではありません。

 生命保険などは、原則解約して解約返戻金を管財人に預けないといけません(配当資金となります)が、既に老齢、健康の問題などから再加入は不可能などの事情があれば、裁判所に申し出て裁判所を説得できれば、自由財産(99万円確保できる財産)を越えての維持を認めて貰うことも可能です。

 私が依頼を受けた案件でも、100万円を越える解約返戻金ある保険をそのまま維持できたことがあります。もちろん、例外的処理ではありますので、毎度うまくいくかどうかは判りません。簡単に諦めずに、是非、ご相談下さい。

投稿者 河原 誠 | 記事URL


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